免疫力とは何か?
免疫は、人間や動物などの生き物の体内に入り込んだ「異物」を除去します。「自分」と「非自分」を識別して、身体を守るしくみです。健康な身体を保つという意味では、恒常性維持機能のひとつです。例えば、お酒の中に含まれるアルコールも異物であり、体内に摂取されると肝臓の酵素によって水とアセトアルデヒドに分解されます。これも代謝と呼ばれる恒常性維持機能のひとつです。代謝は薬物や化学物質などを除去するのですが、免疫は病原体やがん細胞などを見つけて排除することが特徴です。特に、病原体などからの感染に対処する機能を感染防御免疫と呼んでいます。
免疫力とは、このような免疫系が十分に機能しているかどうかを考えるときに問題になるのです。免疫の機能は、免疫細胞が担っています。身体が生まれながらに持っている免疫を「自然免疫」と呼び、非自己の物質が体内に入ってきたときに、免疫細胞が感知して「抗体」をつくるのです。このとき、抗体が反応する物質を「抗原」と呼びます。抗原によって抗体がつくられると、2度目に同じ抗原が体内に入ってきたときに、即座に免疫系が機能し始めるのです。これを「獲得免疫」と呼びます。このような機能を持つ免疫細胞は、血液とリンパ液に乗って体中を巡回しながら、抗原を見つけて処理しつつ健康体を保っているのです。
一般的に、免疫力が低ければ、病原体に感染しやすくなります。例えば、AIDSの名称で知られる後天性免疫不全症候群という病気では免疫細胞にヒト免疫不全ウイルス(HIV)が感染して、免疫細胞が破壊されるため、免疫不全を起こしてしまうのです。AIDS患者は免疫力が低下しているため、普通に生活していればかからないような感染症を引き起こします。
免疫力のバランスとアレルギーの関係
それでは、免疫力は強ければ強いほどよいのでしょうか。実はそうとも言えないのです。免疫力が強すぎてしまうと、本来はそれほど有害性のない物質に対しても過剰に反応するようになります。このような免疫系が過剰に反応してしまう状態を「アレルギー反応」と呼んでいます。つまり、免疫力は弱すぎても強すぎても問題で、バランスが重要なわけです。
代表的なアレルギーは、花粉症になります。花粉が身体に入ってくると、免疫細胞が花粉を異物と判断して抗体をつくり、抗体ができた後で再び花粉が入ってくると、肥満細胞の表面に形成されている抗体と結合するのです。すると、花粉を体外に放出するために、肥満細胞から化学物質が分泌されます。この化学物質の刺激により、くしゃみや鼻水、涙などが誘発されるわけです。
清潔にしすぎるのもアレルギーの原因?
「アレルゲン」はアレルギーの原因物質のことです。これまで、アレルゲンを体内に入れないようにするのがアレルギー治療の基本とされてきましたが、新しい治療の考え方が注目を浴びています。それは、アレルゲンを排除するのではなく、アレルギー反応が起きない程度まで、少しずつ様子を見ながら身体に入れてゆくという免疫療法です。いわば、清潔にしすぎるのではなく、ある程度の清潔さに身体を慣らしてゆく治療法といえるでしょう。アレルゲンを排除しようとして清潔さを求めすぎた結果、バランスが崩れた免疫力を整えようという考え方なのです。
例えば、花粉症の治療では、対処療法としてアレルゲンへの過剰反応を押さえるものが一般的でした。この方法は、継続的な投薬が必要で、完治するわけではありません。これに対し、免疫療法は完治が期待できます。医療用のスギ花粉抽出物を体内に入れる方法です。注射で行う皮下免疫療法と舌下に薬を置く舌下免疫療法があります。これらは、安全性と反応に注意を払いながら、少しずつ量を増やしていき、体質を変える治療法なのです。
免疫力を整えてアレルギー予防!
免疫力を高めるには、毎日の生活習慣から改善する必要があります。36.5度前後の体温を維持すると免疫力が維持できることが知られています。体温が1度下がると免疫力が3割低下するともいわれ、低体温の場合は免疫力の低下につながるので、身体を温めることを意識した生活に改善しなければなりません。まずは、適度な運動をすることです。次に栄養のバランスを考えた食事にも気を配りましょう。
免疫力を高めるには、和食では発酵食品や、玄米や野菜を多く摂取する食生活を心がけます。発酵食品としては、味噌、醤油、納豆などがあり、場合によっては酵素系のサプリメントなども便利です。バランスの良い生活習慣を維持することで、アレルギーに強い身体を目指しましょう。
参考サイト(外部)
アレルギー症状のメカニズムや対処法:アレルギージャーナル