なぜ花粉症の時期に喘息も悪化するの?
花粉症と喘息は医学的に見て関連性の高い病気といわれています。この考え方を「One airway,One disease」といい、多くのデータが花粉症と喘息の関連性を証明しています。花粉症の病名は「アレルギー性鼻炎」といいますが、アレルギー性鼻炎の患者のうち約2割~3割程度は喘息を合併していといわれています。これを喘息の患者から見ると、少なくても4割~5割の喘息患者がアレルギー性鼻炎を併発しているのです。
そして、花粉症の時期に喘息も悪化するのは「鼻腔(上気道)」と「気管支(下気道)」が連続しているからです。もっとも、つながっているからといって花粉が直接気管支まで到達するわけではありません。スギ花粉など粒子が大きい花粉は鼻腔の粘膜に捕まります。しかし、花粉によって鼻腔でアレルギー反応が起こると、炎症の原因となる細胞が鼻腔で増殖し、血流に乗って気管支にも影響を及ぼします。その結果、花粉症がひどくなると喘息も悪化する傾向にあるといわれているのです。
花粉症と喘息どちらを先に治療すべき?
花粉症と喘息には強い関係性がありますが、治療方法に関してどちらを先に治療したほうがよいという科学的根拠はありません。その理由は、症状の改善には個人差があるからです。花粉症の治療によって症状が改善された結果、喘息の症状が緩和したという人もいれば、その逆もあります。さらに、花粉症が悪化したけれども、喘息の症状が治まったというケースもあるのです。どちらかの症状が悪化し、もう一方の症状が緩和したというケースは全体の1割~2割程度といわれています。つまり、全体では「どちらか一方が悪化すれば、もう一方も悪化する傾向がある」ということです。
したがって、花粉症と喘息を併発している場合は「花粉症の治療を行いながら、喘息にも気を配る」もしくは「喘息の治療をしながら、花粉症に気を配る」といった対応になります。そして、できるのであれば「両方同時に治療すること」が最善の方法です。多くの国で治療を同時進行で進めたほうが「喘息の発作が少なくなる」「救急外来の受診回数が減る」というデータが報告されています。
花粉症時期の喘息治療で気を付けるべきポイント
春先や夏ごろになると多くの人が花粉症の症状に悩まされます。そのなかでも、喘息患者は「花粉症がひどくなると喘息の症状も出てくる」という人が一定数います。花粉症の主な症状は「くしゃみ」「鼻水」「目・鼻のかゆみ」などです。しかし、数日後には喘息特有の「発作」や「気管支狭窄音(呼吸するときにヒューヒューとなる音)」などの症状が出る人もいます。
花粉症の時期に喘息の症状を悪化させないためには「普段から気管支の炎症を抑えておく」ことが大切です。花粉症の時期は、花粉によって引き起こされた鼻腔の炎症が気管支にも悪影響を与えます。このとき、普段の治療によって気管支の炎症を抑えていれば、それほど重い症状にはなりにくいでしょう。逆に、普段の喘息治療を怠ったり効果が出ていなかったりすると、気管支は炎症に過敏な状態になってしまいます。この状態で花粉症を併発すればより重たい喘息の症状が出る場合もあるのです。したがって、喘息を持っている人は花粉症の時期が来る前から喘息の治療をきちんと行っておき、気管支の炎症をできるだけ抑えておきましょう。
まずは喘息の原因を知ろう!「予防」が対策のポイント
花粉症の時期に喘息を悪化させないためには、普段から喘息が起こらないように予防をしておくことが非常に重要です。喘息の主な原因は「アレルゲンの過剰摂取」「喫煙」「過労・ストレス」「汚れた空気」「気圧の変化」などになります。特に、アレルゲンの摂取には気を付けましょう。身近にある主なアレルゲンは「ダニ」「ハウスダスト」「ペットの毛・フケ」「カビ」などです。これらのアレルゲンは、毎日の掃除を徹底したり空気清浄機を置いたりすることで軽減することができます。普段から家は清潔に保っておくことが大切です。
また「喫煙」は絶対にやめておきましょう。ただでさえ肺や気管支の機能が衰えているのにもかかわらず、喫煙をすることは喘息の症状を悪化させるだけです。自分が喫煙をしないとしても、家族に喫煙者がいれば意味がありません。症状を悪化させないためには、喫煙者の同意を得て「家の中では吸わない」など協力してもらいましょう。
そして、過労やストレスも喘息の症状を悪化させる原因です。仕事の疲れが溜まっている人は自分なりのストレス発散方法を見つけましょう。ストレスは喘息だけに限らず、万病の元ともいわれています。普段からストレスを溜め込まないような生活習慣が望ましいです。最後に「汚れた空気」や「気圧の変化」なども喘息の原因になります。もっとも、この2つは住んでいる地域に左右されてしまうため、自分の努力ではどうにもしがたい部分があるでしょう。もし、都市部で排気ガスや光化学スモッグが気になる場合はマスクをしたり、週末は山に登ったりするなど、できる限りのことをする姿勢が大切です。喘息の原因を知り、普段から予防することを意識していれば、症状の悪化を最小限に抑えることができます。
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喘息の主な症状や原因、治療法など:アレルギージャーナル
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